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JUNO

十六歳の少女が妊娠する話。なんていうと、それだけで観る気が失せる。なぜなら、そこに描かれるのはたいていただ身勝手なだけの〝純愛〟であり、命を宿す素晴らしさに基づいた感情論だからだ。私はその手のコムスメの論理が大嫌いなので、この映画もハナから無視していた。

が、どうやら悪くないらしい、というのを聞きつけ「そんじゃまあ」と期待せずに映画館へ出かけた。結果を言えば、『ジュノ』は私のようなヒネクレ者こそ観賞すべき作品であった。だって妊娠してしまう主人公の少女こそ、コムスメの論理を嫌うヒネクレ者だったから――である。

まずなにより彼女がおなかの赤ちゃんの父親をこれっぽっちも責めたりせず、うっかり妊娠してしまった自分の責任として受け止めようとする姿勢がステキだ。そして、それを愛の問題にすりかえたりせず、生まれてくる子どものことを考えた末、養子縁組という常識的な判断に至る。

「だって私はまだ精神的にも経済的にも母親になる準備ができていないもの」と、彼女は言う。実はこの映画は、そんなジュノと、彼女が決めた縁組先の女性との、ふれあいの物語でもあった。

優しくリッチな旦那さまと塵ひとつ落ちていない高級住宅に住む完璧な妻でありかつキャリアウーマン。けれどどんなに条件が揃っていても、それは「母親になる準備」とは別のものなのだ。と、いうことを『ジュノ』は教えてくれる。

ジュノはローマ神話の女神の名前。神々の長・ジュピターの妻であり【母性】を司る。映画のジュノはまだ母性を持たぬままに子どもを産み、その経験を経てようやく自分が誰を愛しているかを知る。愛を学び、いつか持つだろう母性を夢見る……。

『ハード キャンディ』に続きエレン・ペイジは演技派の面目躍如。怖カワイイ。

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