« 0018 | トップページ | 0019 »

Lust, Caution

アン・リー監督の最新作。「高慢と偏見」ならぬ「情欲と警戒」の物語。第二次大戦下、東洋の〝魔都〟上海を舞台に繰り広げられる、ロウマンス、である。誰も信用せず信用できず孤独に苛まれる「日本軍の犬」と、親を殺されたレジスタンスの美少女という宝塚顔負けの設定でありながら、そこはさすがアン・リー、一筋縄でいかない物語に仕上がっている。とかくテンポよくスピーディな展開がめだつ昨今の映画のなかで、近年ここまでゆっくりと丁寧にストーリーを追ってゆく作品は珍しい。が、映画好きにはタマランですな。こういうのこそ当って欲しい。けど、難しいかもね。

映画の骨格はメロドラマそのもの。そういう意味では時代も舞台も同じである、昨年公開されたマーチャント&アイボリーコンビの遺作『上海の伯爵夫人』と好対照といえるかもしれない。が、あちらが、あくまで現実に非現実を投影した〝戦場のフェアリーテイル〟であるのに対し、こちらは冷徹なまでに非現実を現実的に描くことで緊迫した心理ドラマを形成している。どちらがすぐれているか? というのは無意味な問。180度ベクトルが違うんだもの。

ネタバレ注意

なにしろ、主人公二人が〝結ばれる〟までメロドラマの定石としてジラしてジラしてジラしぬいておきながら、いきなりSMセックスが展開してしまうんだから、その現実感たるや衝撃的である。そもそもそれ以前に、スパイの「任務」として男に近づき彼を信用させてハメようと少女はしているわけだが、彼女は〝設定として〟人妻なので処女ではイザとなったときにヤバい。だからってんで仲間の男と性交しちゃうんだもの。しかも、それを途中から愉しんでしまうんだもの。メロドラマの主人公としてはありえないでしょ。

つまり、これは「愛のないメロドラマ」なんだよね。

けれど、とことんまで愛の介在しない現実的世界で、少女は非現実であるはずの愛を情欲の果てに発見してそれを男に見せてしまう。その結果、彼女は捕まり男の指示で銃殺されちゃうんだから、まったくもー救いなんてこれっぽっちもない。男は再び孤独のなかに立ち竦み、そこでジ・エンド。観客としては少女に感情移入しちゃってるから、ちょっと、それはドーよ? と思わずにいられない。せめて、彼女が捕まる前に仲間の手によって狙撃されて南京路に倒れる……とかなら悲劇として納得がいく。あるいは男が、それまでは警戒心から入ったことのなかった映画館に、映画好きだった少女を偲んで入り、そこで暗殺されるとかさあ。あるじゃん、いろいろと観客を納得させるテはさ。でも、アン・リーはそれをしないの。あくまで淡々と現実を追ってしまうの。

ところで主人公の美少女を演じたウェイ・タンが、もー可憐で可憐で、ぜひこの人に『沈夫人の料理人』の沈夫人をやっていただきたいなあと儂は思ったのでありました。李三は金城武でお願いしたい。でも、この漫画はアン・リーが撮ったらトンでもないことになりそうなので違う監督がいいな。

« 0018 | トップページ | 0019 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Lust, Caution:

« 0018 | トップページ | 0019 »